もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

月の満ち欠け

自分があまり読まないタイプの小説を読んだ。佐藤正午著「月の満ち欠け」。駅前の本屋の一等地に陳列されていて、なんとなく読みやすそうだな、と思って手に取った。帯に「熟練の技」と書いていて、解説の伊坂幸太郎は、それを「熟練だからでなくずっと昔から小説センスの塊」って否定しているのだけど。読んでみて、「自分が書きたい想いを書くというより、読み物として面白い小説を書く、技術がある人だなあ」という感想を、実際に私も持った。いつも私が手に取るものは、不思議と自分と状況や心境の多くが重なる物語にあたるので、物語と距離感がやたらと近い。しかし今回は、一定の距離を持って「物語」として読んでいた。途中、間に挟まっていた著者によるメッセージ、「自分は60代だがどっかの兄ちゃんが書いたと思って面白がって欲しい」などの趣旨を読んでしまったので、「60代のベテランなんだ」と逆に意識してしまったせいもある。

 

生まれ変わり・出会いをテーマに、何人もの登場人物の関係性を複雑に描き、徐々に紐解いていて、最後まで飽きさせない。どんどん面白くなってきて、小説がどんどん距離を詰めてきて、遂に、自分と重ねてしまった。これは、私の癖。

 

 

自身に起こる解せぬ因縁みたいな出会いを、小説に重ねて「もしかしてあの生まれ変わりでは」などという考えが落ちてきた。それを契機に、妄想で補足して自分のストーリを作ってみると、なんだかそうとしか思えなくなってきた。小説の登場人物のように「いやいや、そんなアホな」とすぐに現実に戻るのだけど、妄想は、人生の

課題にインスピレーションを与え、悪くないと思う。

 

イラストは小説のキーとなる「瑠璃」という女の妄想イメージ。

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岩波文庫的 月の満ち欠け

岩波文庫的 月の満ち欠け