もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

不在通知のコーヒー豆。

近所には、いくつか花屋がある。そのうち行ってみたかった花屋で、コーヒー屋の開店祝いのお花を注文した。シックなグリーン系だけど、コーヒーっぽいポイントで色を入れてくださいと。

 

私が山村のゲストハウスを立ち上げた時にやってきてくれたオープニングスタッフの一人が、自分のコーヒー屋をオープンさせた。もっと言うと、出会ったのはそれより前、私が棚田の集落で企画したアートイベントに参加してくれたのがきっかけ。

 

ゲストハウスを立ち上げることになった時の私には0歳の乳飲み子と2歳児がそばにいた。自分が必要な場所をそのまま場のコンセプトにしたので、「こどもの笑顔がまんなかにある大きな家」にした。だから、一緒に働いてくれる人も子どもと自然に過ごせる人が必要だった。その彼が自然に子どもと接していたということと、バイトでバーテンをやっていたといううっすらとした記憶がよみがえり、オープニングスタッフ不足のSOSを出したら、大企業を辞めてやってきてくれた。

 

ゲストハウスにエスプレッソマシンを導入することにし、何が良いかを彼に調べてもらうことにした。どうもそれから彼はコーヒーにのめり込んだようだ。1年後コーヒー屋に転職し、この度、自分のお店を持つことになった。

 

ゲストハウスは、温泉も付いていたし、掃除やごはんや、早朝から夜が更けるまでやることがとにかくいっぱいあって、コーヒーの前にずっといる彼に業を煮やしたりもした。そのことを、私が持っていた店への愛が正義だとばかりにストレートに指摘したりもした。自分が想いを込めている船に一緒に乗っている人たちには、同じだけ同じ視点で一生懸命になって欲しかった。そうしてもらえないと、自分が認めてもらえていないような、愛と執着がこんがらがった苦しい時だった。そんな愛は傲慢であること、今ならよく分かるけれど。

 

 

それぞれの人生のどこかの地点で交差する出会い。今ならこうするだろうという振り返りも、振り返るからこそ出来ること。過去のことはどうにもならなくても、今、素直なおめでとうという気持ちと、喜びを花に託して届けることは出来る。

 

お花のお返しに、と、焙煎したコーヒー豆が届いた。お礼なんかが届いたことが意外だった。ちょうど豆を切らしたいいタイミングだった。

 

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