もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

〔読書〕鮭の産卵のごとく。

なにを、だれと、どこで。

働く上で大切にしていること。あなたは、今、どの地点にいますか。

 

そんなことを問い掛けられて、たまたま隣に居合わせた人と軽く考えを話すという機会があった。私の答えは「なにを」だった。

 

問い掛けた側には、「なにを」から「だれと」、そして「どこで」へと時代が変化していっているという分析を持っていた。確かにそういう傾向だと思う。地方、コミニュティが注目されているのはそういうことだ。

 

私は、10年くらい前から「なにを」をすっ飛ばして、「だれと」と「どこで」に全力を掛けていた。その結果「いい仕事」も、できたと思う。だけど、現在、そのルートを産卵する鮭のように逆流し、自分の中の「なにを」に向き合っている。

 

「なにを」に向き合うのは想像以上に大変だった。「なに」がいいのか、まったく思いつかないからだ。「だれと」「どこで」をコンビで扱えば、自分一人でなにをしたいかを考えなくて済む。「だれ」かと「どこ」かのために、力を注いでいけばいい。自分の中の「なにを」が見つからないと、どっちに一歩を踏み出せばいいのかわからないので、同じ地点でぐるぐるしていた。

 

 

ふと手に取り、一気に読みきった本は、そんな30代女が自分を深掘りする過程で、心のサプリメントとなった。

 

 

 

夫との別居を機に、なぜか出会い系サイトで人見知らぬ人に会いまくり、その人にあった本を紹介していく武者修行をしていた女性のエッセイ。一人になって自分に向き合っていく中で、どんどん外の世界が広がっていく。さらには、どう生きたいのか、心から好きなことはなんなのか、自分を深く深く掘っていく。彼女は、「普通の幸せ」なんていらないから、本が好きだということに改めて気づいていく。一人でどっちに歩いていいかもわからず呆然と深夜のファミレスにいた冒頭の描写。本の終わりには、一人でも向かうべきところがわかって無敵のパワーがあったし、周囲には新しい世界が広がっていた。

 

掘っていく途中は苦しいこともあるけれど、「なにを」が「なに」なのかわかった時の底力はすごい。心躍らされた一冊だった。

 

「なにを」をつかみとり、新しい世界の獲得のため、遡上しよう。

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