もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

〔読書〕家族シアター

 その時なぜ購入したのか覚えてないから、しばらく放置していた本。

なんとなく気が向いて読んだ。

家族シアター (講談社文庫)

家族シアター (講談社文庫)

 

 いくつかの家族の短編集。

家族の物語を語る主人公は、おじいさん、思春期の男子、小学生女子など多様。大袈裟な展開はどこにもないけど、本当の生活の中で起こったら一大事。どの物語のエッセンスも、共感できる。


「孫と誕生会」というおじいさんが一人称の物語の中で、同居を始めた小学生の孫が、おじいちゃんは他の孫の方が好きなんだ!と劣等感を思い切ってぶつける場面がある。私にも同じ思い出と感情があったことを思い出した。

 

私には双子の妹がいて、二卵性で全く似ていない。幼い時の写真を見ても、どう考えても妹が可愛い。おじいちゃんが、妹のことを露骨に可愛い、可愛いと可愛がっていた。私は、小説の孫のようにぶつかることは出来ず、おばあちゃんに泣いて訴えた。そんなことはないよ、って言われたのか、なんだったか結末は覚えていないけど「おじいちゃんは妹が好き」という贔屓に負けたこと自体が大きくに記憶に残っている。それを原体験的に引きずることはなく、損やなあ、贔屓やなあ、おじいちゃんも親も妹の方が可愛かったやろうな、と関西人らしくネタのように話すけど。私も、我が子らに些細なことで、なんらかの贔屓の記憶を心に残しているのかも。


他にも兄弟間の大小様々な問題。

学校内でのヒエラルキーとか、思春期に罹ってしまうアイドルやバンドへの愛とか。ああ、あったなあ、と回想する。

 

家族という小さな小さな劇場の中。

大きな問題も小さな問題も、起こっていく。問題に向き合ったり、投げ出したり、出たり入ったり。

 

幼き日々の、家族にまつわる些細な感情のヒダを思い出す一冊。