もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

〔仕事〕音声の海を泳ぐ。

かれこれ1年ほどになるかしら。音声を聞いて、文字に起こす仕事を不定期でしている。インタビュー記事を書く際に、取材時にICレコーダーに録った会話を一度すべて文字に起こす作業をすると知ったのもこの頃。ライター自ら行う場合も多いでしょうが、外注する場合もある。

 

私は外注先の影武者として、誰にその内容を言うこともなく、依頼を受けたら黙々と作業するのですが、これが結構面白い。<取材対象><取材時間><媒体>くらいの最低限の情報をもらい、ほとんど未知の音声の海に飛び込むわけです。イマジネーションで補い、イマジネーションを膨らます、さながら読書、さながらラジオ。自分の視野や視点は、思っている以上に、矮小なもんです。ほんと。読書に助けられて、世界の切り取り方を一時的に広げてもらったりするけれど、影武者の文字起こしは、異世界へのショートトリップ。

 

小説を読み進めるうち、登場人物の声色、表情を、知らず知らず妄想でかたちづくり、映画監督により映像化された時に「ああ!」と答え合わせをするように、音声を起こしたものがライターにより写真入りの取材記事として仕上がった時の完結感と言ったら。

 

また、記事では削ぎ落とされているインタビュアーによるコミュニケーションの妙も楽しみのひとつ。相槌、共感力、技術だけでは補えない人柄まで感じきってしまうのは、音声だけならでは。ラジオを聴いているような気分。ああ、こんなにも自己主張を抑えつつ独自の色を醸し出す絶妙な相槌が打てたら、友人知人取引先…あらゆる人との酒の席も豊かになるのでしょう、と甘酸っぱく思うのでした。

 

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