気持ちが沸き起こらなかったし、現実的に時間も場所もなかった。
新しい生活で前ヘと歩んで、他の世界を受けれ入られてきたことと、通勤の電車移動と、一人の時間と、本屋に行く時間が増えたことで、本を読む機会が以前より増えた。
船橋出身の人に、プレゼントされたギャグみたいな本。
興味が薄かったが、吉本ばななをいつか読もうと思っていたタイミングだったので
ページをめくることにした。
登場人物たちの複雑な環境が、いくつかエッセンスとして自らと重なって、吸い込まれるように、言葉を追っていった。
複雑でも、物語全編は、優しさと希望に包み込まれている。
その印象は、先日読んだ「そして、バトンは渡された」とも重なっている。
「私の心はそんなに変化していなかったのに、周りの景色が演劇の舞台セットで建物が反転して別の世界が現れるみたいに、全然違うものになっていた。」
「世の中にはこの反対で、表向きにはなにごとも起きていないのに心の中は地獄、という人だってたくさんいる」
たくさんの誰かの人生のどこかで何人もが感じていることを、ストーリーを編む中で、すごくぴったりな表現を見つけてくる小説家は、本当にすごいと思う今日この頃。
あとがきに、「よしもとばなな」で書いた最後の作品とあった。
現在は「吉本ばなな」。
名前を変えるタイミングの本、というところもなんとなく勝手にシンクロニシティ。